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2018年度法改正に向けた議論の動きをおさえておきましょう
2017年10月31日

いよいよ介護給付費分科会の“第2ラウンド”が開始

各サービスの課題や検討すべき論点を整理する“第1ラウンド”を8月23日に、その後、各事業者団体からのヒアリングを9月に終えた後、衆議院選挙の影響でしばらく小休止となっていた介護給付費分科会。選挙が終わるや否やの10月25日(水)より、いよいよ具体的な改正内容が見えてくる“第2ラウンド”が始まっています。

そんな中、10月25日(水)の分科会では「平成29年度介護事業経営実態調査結果」についての内容確認が行われ、その翌々日である10月27日(金)には「地域区分」「福祉用具貸与」の2点の改正内容案が示されています。

今回は、この両日の議論の中から「地域区分」「福祉用具貸与」に関する内容のポイントについて確認してまいりたいと思います。では、早速、中身を確認してまいりましょう。先ずは「地域区分」についてです。




「地域区分」に関する論点(抜粋)とは

地域区分については現在、下記の様な体系で地域毎・サービス毎の単価が決められている事は皆様ご承知の通りです。
※最下部の「資料1」をご覧ください

そのような中、「級地」に関しては来年度より以下の自治体が変更になる案が示されています(合計48自治体)。

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【変更案として挙げられている地域】
1) 2級地に変更
東京都町田市
2) 3級地に変更
埼玉県さいたま市、東京都三鷹市・青梅市・国立市
3) 4級地に変更
茨城県牛久市、埼玉県朝霞市、千葉県成田市・習志野市、東京都清瀬市、神奈川県逗子市
4) 5級地に変更
茨城県水戸市・日立市、埼玉県ふじみ野市、千葉県市川市・松戸市・八千代市・印西市、神奈川県海老名市・綾瀬市・愛川町、愛知県刈谷市・豊田市、広島県府中町
5) 6級地に変更
千葉県野田市・茂原市・流山市・我孫子市・鎌ケ谷市・白井市、愛知県豊明市・日進市・長久手市・東郷町、大阪府岬町・太子町・河南町・千早赤阪村
6) 7級地に変更
千葉県富津市、石川県内灘町、岐阜県多治見市・各務原市・可児市、愛知県設楽町・東栄町・豊根村、三重県菰野町、徳島県徳島市

※2017年10月27日 介護給付費分科会資料より抜粋
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ちなみに、各市町村の地域区分設定については、原則的には公務員(国家・地方)の地域手当の設定区分に準拠していることは皆様もご存知かと思いますが、公平性・客観性を担保する観点から、公務員の地域手当の設定に準拠しつつ、隣接地域の状況によって、一部の特例が設定されています。

下記 1. は従来からの特例措置ですが、2.が平成30年度より新設となる事も認識しておいた方が良いでしょう。
※最下部の「資料2」もご覧ください

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1.(従来からの特例措置)
公務員の地域手当の設定がない(0%)地域については、地域手当の設定がある地域と複数隣接している場合に限り、本来の「その他(0%)」から「複数隣接している地域区分のうち一番低い地域区分」の範囲内で選択することを可能とする。

2.(平成30年度新設の特例措置)
当該地域の地域区分よりも高い地域に囲まれている場合については「当該地域の地域区分」から「当該地域を囲んでいる地域区分のうち一番低い地域区分」の範囲内で選択することを可能とする。

※2017年10月27日 介護給付費分科会資料より抜粋
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最後に、各サービス毎の人件費割合についても見直しが図られることになっており、こちらは「平成29年度介護事業経営実態調査を特別集計し、その結果を踏まえて、必要に応じて見直しを行う」こととなっています。平成24年度においては訪問看護が55%→70%に、平成27年度は短期入所生活介護が45%→55%に変更となりましたが、今回はどのような見直しが行われるのか。各サービスの実人件費率と設定人件費率(70%・55%・45%)との間に大きな乖離が数多く見られる中、こちらについても注目をしておきたいところです。

では、引き続き、福祉用具貸与に関する議論を追いかけていきましょう。




「福祉用具貸与」に関する論点(抜粋)とは

福祉用具貸与については大きく2点が論点として提示されています。
先ずは一つ目、貸与価格の上限設定等に関する論点、及び対応案についてです。

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【論点1】
○ 全国平均貸与価格の公表や貸与価格の上限設定について、適切に制度を運営していく観点から、施行後の実態も踏まえつつ、必要な対応を行ってはどうか。

【対応案】
○ 現行の貸与商品については、平成30年10月から全国平均貸与価格の公表や貸与価格の上限設定が適用されるが、平成31年度以降、新商品についても、3ヶ月に1度の頻度で同様の取扱いを行うこととしてはどうか。
○ 公表された全国平均貸与価格や設定された貸与価格の上限については、平成31年度以降も、概ね1年に1度の頻度で見直しを行うこととしてはどうか。
○ 全国平均貸与価格の公表や貸与価格の上限設定を行うに当たっては、一定以上の貸与件数がある商品について適用することとしてはどうか。
(例えば、月平均100件以上の貸与件数がある商品について適用することとしてはどうか。)

※2017年10月27日 介護給付費分科会資料より抜粋
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ちなみに月100件以上の貸与実績がある福祉用具は、TAIS登録されている福祉用具全体の中で98.3%にも上るようですが、これを月1,000件以上の実績で仕切ると全体比で9割を割ってしまう(88.9%)ため、一つの目安として「月100件以上」というものが検討されているようです(両数値は介護保険総合データベース(平成28年8月審査分)を基に集計(TAISコードを取得している商品の貸与件数については、「5桁-6桁」の記載を抽出))。

続いて2つ目、機能や価格帯の異なる複数商品の提示等に対する論点と対応案については下記内容になっています。

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【論点2】
○ 利用者が適切な福祉用具を選択する観点から、福祉用具専門相談員に対し、
・ 貸与しようとする商品の特徴や貸与価格に加え、当該商品の全国平均貸与価格を利用者に説明すること
・ 機能や価格帯の異なる複数の商品を利用者に提示すること
・ 利用者に交付する福祉用具貸与計画書をケアマネジャーにも交付すること
について規定を設けてはどうか。

【対応案】
○ これらの内容が確実に実施されるよう、運営基準に規定することとしてはどうか。

※2017年10月27日 介護給付費分科会資料より抜粋
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両論点に共通するのは、「ご利用者が適正な価格の福祉用具を選択できるようにするために、どのような仕組みを新たに設けるべきか」という問題意識。いわゆる“外れ値”をこれ以上発生させないために、上記方向の対応を進めようとしている、という点は、「評価に値する」と言えるのではないでしょうか(「着手が遅すぎる」という指摘もあるようですが)




先手先手で社内議論を進めることが大切

以上、今回は「地域区分」と「福祉用具貸与」に関する論点及び対応策について確認させていただきました。

「12月上旬には基準に関する基本的な考え方のとりまとめを行う」「12月上中旬には介護報酬改定の基本的な考え方のとりまとめを行う」という計画を掲げている同分科会ですが、上述の通り、衆議院選挙で約1ヶ月間の“空白”があった関係上、ここからは毎週のように新たな「論点」「対応案」が出てくると思われます。その意味でも事業経営者・幹部の皆様はタイムリーに情報をキャッチアップし、「もし、議論通りに実行された場合、自社にはどのような影響が出てくるか?」「それら想定される影響に対し、どのような対応を行う事が最適なのか?」等について、先手先手で社内議論を始めていかれる事を是非、おススメする次第です。

私たちも今後、有益な情報を入手出来次第、どんどん情報を発信してまいります。





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