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「区分限度支給額」について、議論されている内容を理解しておきましょう
2017年09月29日

9月の介護給付費分科会は、事業者団体との議論・意見交換に終始

各サービスの課題や検討すべき論点を整理する「第1ラウンド」を8月に終え、いよいよサービスごとに改廃すべき基準や加算要件等を具体的に話し合う「第2ラウンド」へと移行する段階に差し掛かってきている、介護給付費分科会。

9月は事業者団体との議論・意見交換が中心であったため、本会の内容についてこの場で採り上げることは特段必要ないかとは思います。

そこで今回は、前回紙面の都合上触れることが出来なかった「区分限度支給額」の議論内容のポイントについて、念のため、確認してまいりたいと思います。




「区分限度支給額」に関する論点(抜粋)とは

では、早速、中身を確認してまいりましょう。
「区分限度支給額」に関する論点としては、下記が挙げられていました。

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【論点】
区分支給限度基準額の現状等を踏まえ、そのあり方や適用対象外となる加算等についてどのように考えるか。特に、訪問系サービスについて、集合住宅に係る減算の適用を受けている者と、当該減算を受けていない者との公平性の観点から、当該減算と区分支給限度基準額との関係についてどのように考えるか。

※2017年8月23日 介護給付費分科会資料より抜粋
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この論点のテーマは、大別すると、「訪問系以外のサービスに関するあり方」と「訪問系サービスに関するあり方」に分けることが出来ると思われます。ちなみに、前者の「訪問系以外のサービスに関する内容」については、2人の委員から次のような発言が会の中で為されていました(以下、介護給付費分科会議事録から抜粋)。

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【主な発言】
○ 田部井康夫・公益社団法人認知症の人と家族の会理事による発言:
「認知症の人と家族の会」では、従来から要介護4、5の在宅で暮らす人について、限度額をオーバーした分につきましては、できれば同じ1割負担ないし2割負担で利用できるようにしてほしいという要望をしております。
実際の利用は平均しますと要介護4、5でも61%~65%ということで、全体としては節度のある利用がなされているのではないかと考えられます。何らかの条件が必要だと思いますけれども、今すぐではなくても、ぜひそれを検討していただくようにお願いをしたいと思います。
この問題だけ見れば、これによって負担もふえるのかもしれませんけれども、例えば、限度額をオーバーしても、1割で利用することによって、まだそれだったら経済的に家で頑張れるというようなことが当然考えられると思います。そうしますと、施設に入るということが先送りといいますか、そこを選択しなくても済むという意味でも、全体としての支出の軽減ということも考えられると思いますので、単にまた支出がふえるということだけではない視点で考えていただけるとありがたいなと考えておりますので、今後の課題としてもぜひよろしく御検討をお願いしたいと思います。

○ 折茂賢一郎氏(東憲太郎・公益社団法人全国老人保健施設協会会長の代理)による発言:
在宅医療の継続という点で、今後、緊急ショートステイというのが医療と介護の連携の中ではとても重要になってくると考えております。例えば、突然、ケアプランに入っていないものを、いろいろなアクシデントで緊急ショートを受けたいといったときに、区分支給限度基準額を超えてしまう事例が出てきております。
緊急ショートステイというのは、今度の同時改定のときにもとても重要なファクターだと思いますので、緊急ショートについては区分支給限度基準額の適用除外ということにしたほうが良いと思います。これは提案させていただきたいと思います。

※2017年8月23日 介護給付費分科会資料より抜粋
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上記2点の実現の成否については冒頭の通り、第2ラウンドの議論を待つことになりますが、特に前者については実情として大変よく理解出来るものの、どこで条件・線引きをするのか、その基準づくりが難しいように感じるのは、恐らく皆様も同様ではないでしょうか。

次に後者の「訪問系サービスに関するあり方」についての内容確認に移ります。これについては「訪問系サービスについて、集合住宅に係る減算の適用を受けている者と、当該減算を受けていない者との公平性の観点から、当該減算と区分支給限度基準額との関係についてどのように考えるか。」という具体的な論点が示されています。

訪問系サービスについては、事業所と同一敷地内又は隣接する敷地内の建物(養護老人ホーム、軽費老人ホーム、有料老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅)等に居住する利用者に対して訪問する場合に、報酬を10%減算する仕組みが存在する一方、区分支給限度基準額に係る費用の算定に際しては減算後の単位数により判定されることから、「集合住宅に係る減算が適用される者が、減算が適用されない者よりも多くの介護サービスを利用できる現状となっている」ことが問題視されています。この論点に関する各委員の発言は次の通りでした(発言者全員が同意見という珍しい事態となっていますが、その事実を直視すべく、敢えて全員の発言をそのまま抜粋・列挙させていただきます)。

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【主な発言】
○ 鈴木邦彦・公益社団法人日本医師会常任理事の発言:
訪問系サービスにおける同一建物での減算については、平成28年度の診療報酬改定で実施された評価の精緻化との整合性を図るとともに、事業者が減算に伴う減収を回数増で補うことができないように、給付管理の際には減算前の単位数で計算するようにさせることが必要であると考えます。

○ 本多伸行・健康保険組合連合会理事の発言:
集合住宅における減算の適用を受けている人が減算を受けていない人より多くの介護サービスが利用できる状況になっているという矛盾については、公平性の観点からも解消するための措置を講ずるべきだと思います。

○ 小林剛・全国健康保険協会理事長の発言:
集合住宅での訪問系サービスの減算を受けている方とそれ以外の方との公平性の問題についてはもう既に各委員から御意見がありましたように、ぜひこの機会に見直しを図るべきだと思います。例えば、集合住宅で訪問系サービスの減算を受けている方については、区分支給限度基準額の算定上は、当該減算前の報酬で計算するなどの方法が考えられるのではないかと思います。

○ 瀬戸雅嗣・公益社団法人全国老人福祉施設協議会理事・統括幹事の発言:
同一建物減算と区分支給限度基準額の関係ですけれども、ほかの委員がおっしゃられているとおり、不公平是正の観点から、やはり減算前の単位で計算するということが必要なのではないかと思います。

○ 井上隆・一般社団法人日本経済団体連合会常務理事の発言:
集合住宅の減算につきましては、皆様と同じです。公平性の観点から、減算前の単位数を用いるべきだと思います。

○ 及川ゆりこ・公益社団法人日本介護福祉士会副会長の発言:
ほかの委員と同じように、私どもも、この論点の当該減算と区分支給限度基準額との関係でございますが、健全な制度運営の視点から考えれば、減算の対象となるサービスを利用した場合の区分支給限度基準額も下げるなどの対応を検討する必要があると考えます。

○ 小原秀和・一般社団法人日本介護支援専門員協会副会長の発言:
私もほかの委員と同じ考えなのですけれども、ただ、集合住宅に入居する要介護者等につきましては、そもそも相当量の介護サービス等の利用が必要なケースもありますので、利用者さんの立場になれば、必要以上に限度額が引き下げられることによる問題も生じかねないと思いますので、個別の配慮だとか、軽度者、重度者に分けて考える等の配慮は必要かと思います。

※2017年8月23日 介護給付費分科会資料より抜粋
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上記各々の発言を見ても、この論点についてはほぼ結論が見えている(=給付管理の際には減算前の単位数で計算するように変更)ように思われます。




議論のプロセスから関心を持って情報を追いかけておくことが大切

以上、今回は区分限度支給額に関する論点について確認させていただきました。

特に後段の論点については、対象事業者にとっては経営上、大きな打撃になる可能性が高いように思われます。

「もし上記が実行された場合、自社にはどのような影響が出てくるか?」「それら想定される影響に対し、どのような対応を行う事が最適なのか?」幹部育成の視点も含め、そのような議論を社内で始めていかれる事を是非、おススメする次第です。

私たちも今後、有益な情報を入手出来次第、どんどん情報を発信してまいります。




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