介護経営情報 介護助成金情報

社会保障制度改革国民会議の報告書から見る介護業界の将来像(その2)
2013年09月25日

報告書の記載内容から“各論”“未来”をよむ

前回は、改革の大きな方向性やその背景について、総論部分について確認・解説を行いました。
今回はより具体的レベル・各論に目を向け、“地域包括ケアシステムの実現”というテーマに沿って、社会保障制度改革国民会議報告書の中身について考察を加えていきたいと思います。


医療法人制度・社会福祉法人制度の見直しの方向性~大きなうねりの始まり!?~

本テーマに関する記述として、報告書の中には下記の文章が挙がっています。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
(1)医療法人等の間の競合を避け、地域における医療・介護サービスのネットワーク化を図るためには、当事者間の競争よりも協調が必要であり、その際、医療法人等が容易に再編・統合できるよう制度の見直しを行うことが重要である。
(2)このため、医療法人制度・社会福祉法人制度について、非営利性や公共性の堅持を前提としつつ、機能の分化・連携の推進に資するよう、例えばホールディングカンパニーの枠組みのような法人間の合併や権利の移転等を速やかに行うことができる道を開くための制度改正を検討する必要がある。
複数の医療法人がグループ化すれば、病床や診療科の設定、医療機器の設置、人事、医療事務、仕入れ等を統合して行うことができ、医療資源の適正な配置・効率的な活用を期待することができる。
(3)特に社会福祉法人については、経営の合理化、近代化が必要であり、大規模化や複数法人の連携を推進していく必要がある。また、非課税扱いとされているにふさわしい、国家や地域への貢献が求められており、低所得者の住まいや生活支援などに積極的に取り組んでいくことが求められている

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

地域包括ケアを本当の意味で実現するには、形式論ではなく、本質的な意味での「医療・介護の連携」が不可欠であることは、誰もが理解出来るところだと思います。それらを本気で促進するために、ホールディングカンパニー等、民間の営利法人に類似したスキームも導入できるように制度変更を検討していこう、という“国の意志”が本文に強く表れている、と私は理解しています。

また、そのような仕組みが促進されることで、経営の規模拡大による合理化も促進され、今後、更に傾向が強まるであろう診療報酬・介護報酬の圧縮(低減)に対しても、経営力で乗り切れる可能性が十二分に高まることも、当然言外に織り込まれているものと思われます。

同時に、社会福祉法人に対しても、上記も含めた大きな方向転換が求められてくることは間違いありません。社会福祉法人の経営者としては、各自治体としっかりコミュニケーションをとりつつ、“社会福祉法人たる使命”“存在意義”を発揮しつつ、“経営”を強く志向していくことが今まで以上に求められてくる、と言えそうです。


第6期以降の事業計画は、「地域包括ケア計画」の様相をはっきりと意識したものに

本テーマに関連する記述としては、下記文章が挙げられます。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
(1)地域包括ケアシステムの構築に向けて、まずは、2015(平成27)年度からの第6 期以降の介護保険事業計画を「地域包括ケア計画」と位置づけ、各種の取組を進めていくべきである。
具体的には、高齢者の地域での生活を支えるために、介護サービスについて、24 時間の定期巡回・随時対応サービスや小規模多機能型サービスの普及を図るほか、各地域において、認知症高齢者に対する初期段階からの対応や生活支援サービスの充実を図ることが必要である。これと併せて、介護保険給付と地域支援事業の在り方を見直すべきである。
(2)地域支援事業については、地域包括ケアの一翼を担うにふさわしい質を備えた効率的な事業(地域包括推進事業(仮称))として再構築するとともに、要支援者に対する介護予防給付について、市町村が地域の実情に応じ、住民主体の取組等を積極的に活用しながら柔軟かつ効率的にサービスを提供できるよう、受け皿を確保しながら新たな地域包括推進事業(仮称)に段階的に移行させていくべきである。
(3)地域包括ケアの実現のためには地域包括支援センターの役割が大きい。かかりつけ医機能を担う地域医師会等の協力を得つつ、在宅医療と介護の連携を推進することも重要である。これまで取り組んできた在宅医療連携拠点事業について、地域包括推進事業として制度化し、地域包括支援センターや委託を受けた地域医師会等が業務を実施することとすべきである。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

第6期以降は、地域包括ケアの中核として位置付けられている「定期巡回・随時対応型サービス」や「小規模多機能(複合型含む)」、そして、認知症高齢者に対するサポート体制の本格推進(オレンジプラン)、並びに、新たな名称として出てきた「地域包括推進事業(仮称)(※)」の推進に本格的に取り組んでいかなければならない、いう国の意図が、本文には明確に表れています。
各自治体や地域包括支援センターが上記の動き・スピード感にどこまでついてこれるのだろうか?という現実的な課題は残るものの、私たち事業者としては、自社の今後の成長戦略として、地域の課題を見据えながら、どのようなコンセプトに基づき、どのようなサービスを展開していくのか、について考えをまとめ、具体的に動かなければならない時期にいよいよ差し掛かってきているのではないでしょうか。

我々としても、今後、上記を含め、有益な情報が入り次第、皆様へ発信させていただきますし、有益な対応策等があれば積極的にご提案をさせていただくようにしてまいります。

最後に、本報告書の解説の最終回となる次回は、消費増税と介護報酬の影響について考えてみたいと思います。
(※)「地域包括推進事業」は現状の「介護予防・日常生活支援総合事業」の名称変更ではないか、と
思われますが、現段階では断定が出来ない状況であること、お含み下さいませ。


▲ PAGETOP