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社会保障制度改革国民会議の報告書から見る介護業界の将来像(その1)
2013年09月10日

2025年以降の社会を見据えた“羅針盤”「社会保障制度改革国民会議報告書」をどう読むか?

昨年の11月30日から内閣官房主導のもとで始まった、「社会保障制度改革国民会議」。2013年8月6日、政府は、全20回の議論を終え、本会議の報告書を「~確かな社会保障を将来世代に伝えるための道筋~」というサブテーマを加えて取りまとめました。

“団塊の世代”と呼ばれる1947年~1949年生まれの全ての方々が75歳を超える“2025年”以降を見据え、日本の社会保障制度、その一翼としての医療・介護制度が、どのようなベクトルを持って、文字通り“改革”されていくか?本報告書には、それらに対する大きな方向性が示されています。

本報告書の中で、特に介護事業者が理解・認識しておかなければならないであろうポイントについて、引用形式を用いて確認・コメントを加えたものを、今回の記事から数えて計3回に渡ってお届けいたします。(今回は、財政面等の課題に端を発する、改革の総論について考察していきます)。



改革総論~基礎的背景として、我々が認識しておかなければならないこと~

先ず、本報告書には、大きな見通しとして、次のような言葉が記されています(一部表現変更あり)。

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(1)「GDP(国内総生産)の2倍を超える公的債務残高ゆえに金利の上昇に脆弱な体質を持つ日本は、財政健全化の具体的進捗を国内外に示し続けなければならないという事情を負っている。今後、必要な医療・介護サービスを将来にわたって確実に確保していくためには、必要な安定財源を確保していくための努力を行いながらも、医療・介護資源をより患者のニーズに適合した効率的な利用を図り、国民の負担を適正な範囲に抑えていく努力も継続していかなければならない。」

(2)「(2012年から2025年に向けてGDP成長が大きくは期待できない中、)年金財政と比較した場合、年金給付費の対GDP比は2012(平成24)年度で11.2%、2025(平成37)年度で9.9%とその比率が低下することが期待されているのに、同時期、介護給付費は1.8%(自己負担を含む総介護費では1.9%)から3.2%(同3.5%)へと1.5%ポイントの増加が見込まれ、財源調達のベースとなるGDPの伸び率を上回って医療・介護給付費が増加することになる。ゆえに負担面では、保険料・税の徴収と給付段階の両側面において、これまで以上に能力に応じた負担の在り方、負担の公平性が強く求められることになる。

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借金大国である日本。加えて、経済全体に亘り、今後、益々厳しさが増すであろうことが容易に予測される中、介護保険制度存続のための財源確保を大前提に据えつつ、患者・ご利用者のニーズに応えながらも、

1. サービスの適正化・報酬範囲等の見直し
2. (負担を適正な範囲に抑えることも意識しつつ)1号・2号の保険料の見直し
3. 更なる税収増(税率アップ?)

等々の課題に対応していかなければならない、という趣旨が明確に打ち出されています。

また、それらを背景に、例えば上記 1. 2. に対する具体案としては、次のような文章も記されています。


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(1)予防給付の見直しのほか、利用者負担等の見直しが必要である。
(2)介護保険制度では利用者負担割合が所得水準に関係なく一律であるが、制度の持続可能性や公平性の視点から、一定以上の所得のある利用者負担は、引き上げるべきである。
(3)施設入所の場合、世帯の課税状況や課税対象の所得(フロー)を勘案して、利用者負担となる居住費や食費について補足給付により助成を受けることとなっている。その結果、保有する居住用資産や預貯金が保全されることとなる可能性があり、世代内の公平の確保の観点から、補足給付に当たっては資産(ストック)も勘案すべきである。また、低所得と認定する所得や世帯のとらえ方について、遺族年金等の非課税年金や世帯分離された配偶者の所得等を勘案するよう、見直すべきである。
(4)特別養護老人ホームは中重度者に重点化を図り、併せて軽度の要介護者を含めた低所得の高齢者の住まいの確保を推進していくことも求められている。
(5)デイサービスについては、重度化予防に効果のある給付への重点化を図る必要があろう。
(6)低所得者をはじめとする国民の保険料に係る負担の増大を抑制する観点からは、今後の高齢化の進展に伴う保険料水準の上昇に対応するため、低所得者の第1 号保険料について基準額に乗じることにより負担を軽減している割合を更に引き下げ、軽減措置を拡充すべきである。
(7)第2 号被保険者の加入する医療保険者が負担する介護納付金については、現在、第2 号被保険者の人数に応じたものになっており、負担の公平化の観点から、被用者保険について、被保険者の総報酬額に応じたものとしていくべきであるが、後期高齢者支援金の全面総報酬割の状況も踏まえつつ検討すべきである。

こうした取組も含め、負担の公平にも配慮しながら、介護保険料の負担をできるだけ適正な範囲に抑えつつ、介護保険制度の持続可能性を高めるため、引き続き、介護サービスの効率化・重点化に取り組む必要がある(以上、報告書本文より引用抜粋)。

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誤解を恐れずに言うと、財源確保については、「福祉の精神・観点からも、全体としての公平な負担増と共に、収入や預貯金、資産がある方には今まで以上に支払ってもらい、財政健全化に貢献・協力してもらわざるを得ない。」という方向が強まると言えるでしょう。←上記(2)(3)(6)(7)

また、サービスの範囲については、介護保険の理念である「自立と尊厳」を礎に、「限られた財源をどう効果的・効率的に活用するか?」という観点から、「サポートの緊急性・優先順位が高いもの」「(目指す社会像の実現や、効果的&効率的な財源活用・圧縮の観点から)費用対効果が高いと思われるもの」に注力していくものと思われます←上記(1)(4)(5)
(予防に関しては以前お伝えした通りです)

今回の記事ではここまでとさせていただきます。
既に本記事を以前よりお読みいただいている皆様からすれば、再確認、という内容も多かったかもしれませんが、是非、あらためて、見直してみていただければ幸いです。
次回は別の切り口・情報から、より各論に近い情報をピックアップし、お伝えしてまいります。


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