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2022年4月に行われた「財政制度分科会」の内容を確認しておきましょう
2022年04月28日

財務省としての意見を発信する「財政制度分科会」が開催

期が変わったばかりの2022年4月。そんな折、財政的観点から「社会保障関連分野においても聖域をつくらず、抜本的改革に着手すべき」と声高に主張する“財政制度分科会”が4月13日に開催されました。

“国の金庫番”とも呼べる財務省が介護業界に対し、どのような改革案を突き付けているのか?今回は同省が作成した資料「社会保障について」の中で特に介護事業者に関連するであろう論点の中から抜粋し、特に注視・認識しておいた方が良いと思われる6点の内容を採り上げ、お届けしてまいります。




財政制度分科会で採り上げられた「論点」「改革の方向性(案)」とは

では、早速、中身に移ってまいりましょう。ここでは本分科会で示された資料から抜粋・紹介する形で進めてまいります。

先ずは、「介護サービス提供体制の効率性の向上の必要性」という資料についてです(認識しておいた方が宜しい箇所を太字で強調しておりますのでご確認下さい)。

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○ そもそも、介護保険制度は、行政がサービスを提供する従来の措置制度ではなく、利用者が介護サービス事業者を選択することを基本として、多様な事業者が利用者と相対して契約を締結し、これに基づいてサービスを提供する制度として導入された。
限られた財源の下で、事業者間の競争が生じ、その結果として、サービスの質の向上や事業の効率化が進むことが期待されていた。
○ しかし、現状は、営利法人を含めた幅広い主体の参入こそ進んだものの、先に述べたとおり介護サービスの経営主体は小規模な法人が多く、競争が必ずしもサービスの質の向上につながっているとも言い切れないうえ、業務の効率化も不十分と言わざるを得ない。
○ 他方で、規模別に見ると、規模の大きな事業所・施設や事業所の数が多い法人ほど平均収支率が高いなど規模の利益が働き得ることも事実である。
○ 介護分野では主として収入面が公定価格によって規定される以上、費用面の効率化が重要であり、国や自治体が先進・優良事例を示して、備品の一括購入、請求事務や労務管理など管理部門の共通化、効率的な人員配置といった費用構造の改善、更にはその実現に資する経営の大規模化・協働化を慫慂していくべきである。
○ 介護給付費の徒な増大を防ぐ観点からは、規模の利益を生かすなどこうした取組に成功し、効率的な運営を行っている事業所等をメルクマールとして介護報酬を定めていくことも検討していくべきであり、そのようにしてこそ大規模化・協働化を含む経営の効率化を促すことができる。

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続いて、「利用者負担の見直し」についてです。

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介護保険制度の持続可能性を確保するためには、利用者負担の更なる見直しをはじめとした介護保険給付の範囲の見直しに引き続き取り組むことも必要である。
○ 利用者負担については、2割・3割負担の導入を進めてきたが、今般の後期高齢者医療における患者負担割合の見直し等を踏まえ、
【1】介護保険サービスの利用者負担を原則2割とすることや2割負担の対象範囲の拡大を図ること、
【2】現役世代との均衡の観点から現役世代並み所得(3割)等の判断基準を見直すこと
について、第9期介護保険事業計画期間に向けて結論を得るべく、検討していくべきである。

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続いて、「ケアマネジメントの利用者負担の導入」についてです。

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○ 居宅介護支援(ケアマネジメント)については、要介護者等が積極的にサービスを利用できるようにする観点から、利用者負担をとらない例外的取扱いがなされてきた。
しかしながら、介護保険制度創設から20年を超え、サービス利用が定着し、他のサービスでは利用者負担があることも踏まえれば、利用者負担を導入することは当然である。
○ そもそも、制度創設時、ケアプラン作成は「高齢者の自立を支援し、適切なサービスを確保するため、…そのニーズを適切に把握したうえで、ケアプランを作成し、実際のサービス利用につなぐもの」とされていたが、その趣旨にそぐわない実情も見られる。具体的には、ケアマネ(居宅介護支援)事業所の約9割が他の介護サービス事業所に併設しており、「法人・上司からの圧力により、自法人のサービス利用を求められた」という経験を見聞きしたケアマネジャーが約4割いるなど、サービス提供に公正中立性の問題が存在することが窺える。さらに、ケアマネジャーは、インフォーマルサービスだけでなく、介護保険サービスをケアプランに入れなければ報酬を受け取れないため、「介護報酬算定のため、必要のない福祉用具貸与等によりプランを作成した」ケアマネジャーが一定数いることが確認されている。
○ 利用者が自己負担を通じてケアプランに関心を持つ仕組みとすることは、ケアマネジャーのサービスのチェックと質の向上にも資することから、第9期介護保険事業計画期間から、ケアマネジメントに利用者負担を導入すべきである。
○ また、福祉用具の貸与のみを行うケースについては報酬の引下げを行うなどサービスの内容に応じた報酬体系とすることも、あわせて令和6年度(2024年度)報酬改定において実現すべきである。

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続いて、「多床室の室料負担の見直し」についてです。

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○ 制度創設時から、「施設介護については、居宅介護とのバランスや高齢者の自立が図られてきている状況から見て、食費等日常生活費は、利用者本人の負担とすることが考えられる」とされていた(「高齢者介護保険制度の創設について」(1996))。
このため、2005年度に、食費と個室の居住費(室料+光熱水費)を介護保険給付の対象外とする見直しを実施(多床室は食費と光熱水費のみ給付対象外)し、2015年度に、特養老人ホームの多床室の室料負担を基本サービス費から除く見直しを行った。
○ しかしながら、介護老人保健施設・介護医療院・介護療養病床の多床室については、室料相当分が介護保険給付の基本サービス費に含まれたままとなっている。
○ 居宅と施設の公平性を確保し、どの施設であっても公平な居住費(室料+光熱水費)を求めていく観点から、給付対象となっている室料相当額について、第9期介護保険事業計画期間から、基本サービス費等から除外する見直しを行うべきである。

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続いて、「区分支給限度額のあり方の見直し」についてです。

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○ 介護サービスは生活に密接に関連し利用に歯止めが利きにくいこと等から、制度創設時に、「高齢者は介護の必要度に応じて設定された介護給付額の範囲内で、自らの判断と選択により実際に利用したサービスについて保険給付を受けることができることとすることが適当である」 (「高齢者介護保険制度の創設について(1996)」)とされ、要介護度ごとに区分支給限度額が設定された。
○ しかしながら、制度創設以降、様々な政策上の配慮を理由に、区分支給限度額の対象外に位置付けられている加算が増加している。
○ 制度創設時に企図したように、設定された限度額の範囲内で給付を受けることを徹底すべきであり、居宅における生活の継続の支援を目的とした加算をはじめ、第9期介護保険事業計画期間に向けて加算の区分支給限度額の例外措置を見直すべきである。

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最後に、「軽度者へのサービスの地域支援事業への移行」についてです。

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○ 要支援者に対する訪問介護、通所介護については、地域の実情に応じた多様な主体による効果的・効率的なサービス提供を行う観点から、地域支援事業へ移行したところ(2018年3月末に移行完了)。
要介護1・2への訪問介護・通所介護についても、生活援助型サービスをはじめとして、全国一律の基準ではなく地域の実情に合わせた多様な人材・多様な資源を活用したサービス提供を可能にすることが効果的・効率的である。
○ 先に述べた地域支援事業のあり方の見直しに取り組みつつ、第9期介護保険事業計画期間に向けて、要介護1・2への訪問介護・通所介護についても地域支援事業への移行を検討し、生活援助型サービスをはじめとして、全国一律の基準ではなく地域の実情に合わせた多様な人材・多様な資源を活用したサービス提供を可能にすべきである。

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国策の“風”を読み取り、早め早めの準備を

以上、財政制度分科会内の資料「社会保障」より、介護事業者に直接関係のある部分から論点を幾つか抜粋してお伝えさせていただきました。

本内容は国全体の方針ではなく、あくまで「財務省」という一省庁の意見である、ということはしっかり認識しておく必要はあろうかと思いますが、それでも「財政健全化」が叫ばれる我が国としては、財務省の挙げる声に一定の重みがあることも否めない事実だと思われます。

事業者としては上記内容を踏まえつつ、「もしこれらの施策が実行された場合にどう対応するか?」について事前に頭を働かせておくことが重要だと言えるでしょう。私たちも今後、引き続き、本テーマを含め、より有益な情報や事例を入手出来次第、皆様に向けて発信してまいります。

※上記内容の参照先URLはこちら

https://www.mof.go.jp/about_mof/councils/fiscal_system_council/sub-of_fiscal_system/proceedings/material/zaiseia20220413/01.pdf



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