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今年10月開始「特定処遇改善加算」の第一弾Q&Aの内容を確認しておきましょう
2019年04月25日

2019年4月12日、「介護職員等特定処遇改善加算」のQ&A(第一弾)が公表

2019年度に入っても引き続き、様々な議論を呼んでいる、「介護職員等特定処遇改善加算(以降、本加算と表記」。そんな中、4月12日に公表された介護保険最新情報Vol.719の中で、本加算に対する第一弾のQ&Aが示されました。

そこで示されたQ&Aの数は全部で15項目(事業者向けQ&Aが14項目、指定権者向けQ&Aが1項目)。今回は、その15項目の内容について確認・解説してまいります。




「介護職員等特定処遇改善加算」Q&A(Vol.1)15項目の中身とは

それでは早速、中身に移ってまいりましょう。先ずはQ&Aの1点目についてです。

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【問1】
介護職員等特定処遇改善加算は、勤続10年以上の介護福祉士がいなければ取得できないのか。

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「取得可能」です。本加算の取得要件としてはあくまで「現行の介護職員処遇改善加算(I)から(III)までを取得していること」「介護職員処遇改善加算の職場環境等要件に関し、複数の取組を行っていること」「介護職員処遇改善加算に基づく取組について、ホームページへの掲載等を通じた見える化を行っていること」の3つであり、「勤続10年以上の介護福祉士がいること」は要件には入っておりません。

従って、本加算を取得し、一定のルールに則って勤続10年未満の職員に配分を行うことは一向に差し支えない、ということを理解しておきましょう。続いて2つ目のQ&Aについてです。

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【問2】
職場環境等要件について、現行の介護職員処遇改善加算の要件を満たすものとして実施している取組とは別の取組を実施する必要があるのか。

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本加算は、「資質の向上」「労働環境・処遇の改善」「その他」の区分ごとに一以上の取組を行うことが必須要件となっていますが、既存の処遇改善加算の算定に当たって実施してきた取組以外の新たな取り組みを行うことまでは求められていません。

故に、既存の活動が「資質の向上」「労働環境・処遇の改善」「その他」のいずれかに該当していれば、その区分において新たな取り組みを行う必要はありませんし、仮に現在の取り組みが3区分全てに亘っているのであれば、新たな取り組みを行う必要はない、ということを確認しておきましょう(但し、本解説はあくまで加算要件上の話であり、組織活性化施策として新たな取り組みを付加していくことは積極的に検討していくべきかと思います)。続いて3つ目のQ&Aについてです。

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【問3】
ホームページ等を通じた見える化については、情報公表制度を活用しないことも可能か。

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情報公表制度を活用しなくても、自社ホームページにて「介護職員等特定処遇改善加算の取得を行っていること」「賃金改善以外の処遇改善に関する具体的な取組内容を公表すること」を行っていれば可能です。

介護の仕事を探している求職者や利用する事業所・施設を探すご家族の中での「情報公表制度」の認知度・浸透度合いを勘案すると、自社ホームページの中で積極的に発信することは重要だと思われます。続いて4つ目のQ&Aについてです。

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【問4】
経験・技能のある介護職員について、勤続10年以上の介護福祉士を基本とし、介護福祉士の資格を有することを要件としつつ、勤続10年の考え方については、事業所の裁量で設定できることとされているが、どのように考えるのか。

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勤続10年の考え方については、「同一法人のみだけでなく、他法人や医療機関等での経験等の通算も可能」「事業所内で設けられている能力評価や等級システムを活用するなど、10年以上の勤続年数を有しない者であっても業務や技能等を勘案して対象とすることも可能」となっています。

換言すれば、「勤続10年以上」の設定・定義については、客観性・合理性さえ担保出来ていれば各事業所の判断でOKということになるでしょう。続いて、5番目のQ&Aについてです。

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【問5】
経験・技能のある介護職員に該当する介護職員がいないこととすることも想定されるのか。その場合、月額8万円の賃金改善となる者又は処遇改善後の賃金が役職者を除く全産業平均賃金(440万円)以上となる者を設定・確保することは必要か。

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結論から申し上げると、「経験・技能のある介護職員に該当する介護職員がいない」という想定は、あり得ます。本加算はあくまで、「経験・技能のある介護職員に重点化を図りながら、介護職員の更なる処遇改善を行う」ことに主眼が置かれており、その意味では事業所内で相対的に経験・技能の高い介護職員を「経験・技能のある介護職員」のグループとして設定し、その中で月額8万円の賃金改善となる者等を設定することが先ずの基本・大原則だと思われます。

然しながら「介護福祉士の資格を有する者がいない」「比較的新たに開設した事業所で、 研修・実務経験の蓄積等に一定期間を要する」等々、経験・技能のある介護職員のグループを設定すること自体が合理性に欠ける場合も考えられ、その場合においては「(上述の)基本・大原則の限りではない」という判断も成立します。

問4でもありましたが、その設定・定義に客観性・合理性があるかどうか、そして、労使間において納得感が醸成されているか(どのような経験・技能があれば「経験・技能のある介護職員」のグループに該当するかについての合意があるかetc)が何より重要となる、ということを理解しておく必要があるでしょう。続いて6番目のQ&Aについてです。

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【問6】
月額8万円の処遇改善を計算するに当たり、現行の介護職員処遇改善加算による改善を含めて計算することは可能か。

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不可能です。月額8万円の処遇改善の計算に当たってはあくまで、介護職員等特定処遇改善加算による賃金改善分で判断するため、現行の介護職員処遇改善加算による賃金改善分とは分けて判断することが必要となります(=既存の処遇改善加算実行後の金額を基準として、その金額に月額8万円の処遇改善を上乗せさせなければならない、という意味)。続いて7番目のQ&Aについてです。

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【問7】
処遇改善後の賃金が、役職者を除く全産業平均賃金(440万円)以上かを判断するにあたっての賃金に含める範囲はどこまでか。

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「経験・技能のある介護職員」のうち設定することとしている「月額8万円の処遇改善」又は「処遇改善後の賃金が役職者を除く全産業平均賃金(440万円)以上」の処遇改善となる者に係る処遇改善後の賃金額については、手当等を含めて判断することとなります。

なお、「月額8万円」の処遇改善については、法定福利費等の増加分も含めて判断し、処遇改善後の賃金「440万円」については、社会保険料等の事業主負担その他の法定福利費等は含まずに判断する、という違いにも注意が必要です。続いて、8番目のQ&Aについてです。

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【問8】
2019年度は10月から算定可能となるが、経験・技能のある介護職員について、処遇改善後の賃金が、役職者を除く全産業平均賃金(440万円)以上かを判断するにあたり、考慮される点はあるのか。

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介護職員等特定処遇改善加算が10月施行であることを踏まえ、2019年度の算定に当たっては、6月間又はそれ以下の期間の介護職員等特定処遇改善加算を加えても、2019年度の年収が440万円以下になってしまう場合も十分に考えられます。

その場合は、「仮に本加算を12月間算定したとしたときに、年収440万円以上となっているかどうか」で判断されることになります。続いて、9番目のQ&Aについてです。

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【問9】
その他の職種の440万円の基準を判断するにあたって、賃金に含める範囲はどこまでか。

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先ず、問9・問10の前提として、「その他の職種において、賃金改善前の賃金がすでに年額440万円を上回る場合には、当該職員は特定加算による賃金改善の対象とならない」というルールを予め理解しておく必要があります(恐らく「その他の職種」の中に医師や看護師等の医療職が含まれることを想定しての事と思われます)。

その前提のもと、経験・技能のある介護職員と同様、その他の職種の440万円の基準については、「手当等を含めて判断」「法定福利費等は含まず」となります。続いて、10番目のQ&Aについてです。

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【問10】
その他の職種の440万円の基準についての非常勤職員の給与の計算はどのように行うのか。

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非常勤職員の給与の計算に当たっては、常勤換算方法で計算し、賃金額を判断することとなります。続いて11番目のQ&Aについてです。

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【問11】
小規模な事業所で開設したばかりである等、設定することが困難な場合に合理的な説明を求める例として、8万円等の賃金改善を行うに当たり、これまで以上に事業所内の階層・役職やそのための能力・処遇を明確化することが必要になるため、規程の整備や研修・実務経験の蓄積などに一定期間を要する場合が挙げられているが、「一定期間」とはどの程度の期間を想定しているのか。

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地域における賃金水準や経営状況等、それぞれ状況は異なることから、「一定期間」が一律の基準で定められることはありません。然し、いたずらに期間を長延ばしすることは当然ながら好ましいことではなく、その期間の設定にも一定の客観性・合理性が求められてくることになります。続いて、12番目のQ&Aについてです。

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【問12】
各グループの対象人数に関して、「原則として常勤換算方法による」とされているが、どのような例外を想定しているのか。

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先ず、各グループにおける平均賃金改善額を計算するに当たり、経験・技能のある介護職員及び他の介護職員については、常勤換算方法による人数の算出を求めることとなっており、このグループに関しては例外はありません。

一方、その他の職種については(常勤換算という算出方法を基本としつつも)、事務職員等、本算出方法に馴染まない職種の方々も含まれる可能性があるため、その場合は実人数としてカウントされることが例外として想定されるため、このような解説になっています。続いて、13番目のQ&Aについてです。

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【問13】
平均改善額の計算にあたり、母集団に含めることができる職員の範囲はどこまでか。

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賃金改善を行う職員に加え、賃金改善を行わない職員についても、平均改善額の計算を行うにあたり職員の範囲に含めることになりますので算出時には注意が必要です。続いて、14番目のQ&Aについてです。

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【問14】
実績報告に当たって、積算の根拠となる資料は「求められた場合には、提出できるようにしておく」とあるが、予め提出を求めても差し支えないか。

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こちらが冒頭で申し上げた通り、事業者向けではなく指定権者に向けられたQ&Aになっています。その意味では本内容は今回のニュースレターから割愛しようか?とも考えましたが、「指定権者に対してこのような内容の通知が発出されている」ということを知っておくことも必要かな、と思い、敢えて残させていただきました。

ちなみに、上記に対する厚生労働省からの回答・見解は下記となっています。

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今後とも見込まれる厳しい介護人材不足の中、国会等でも介護事業所の事務負担・文書量の大幅な削減が強く求められている。過去の経緯等を踏まえ、特定の事業所に個別に添付書類の提出を求めることは差し支えないが、各事業所における賃金改善の方法や考え方については、処遇改善計画書及び実績報告書において記載を求めており、また職員の個々の賃金改善額は柔軟に決められる一方、各グループの平均賃金改善額のルールを設け、実績報告書に記載を求めるものであり、更に詳細な積算資料(各職員の賃金額や改善額のリスト等)の事前提出を一律に求めることは想定していない
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もし、上記内容の書類を指定権者から求められた場合は是非、堂々と「No!」と言っていただきたく思います。それでは最後、15番目のQ&Aについてです。

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【問15】
介護職員等特定処遇改善加算については、法人単位の申請が可能とされているが、法人単位での取扱いが認められる範囲はどこまでか。

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「月額8万円の処遇改善となる者又は処遇改善後の賃金が役職者を除く全産業平均賃金(440 万円)以上となる者の設定・確保」「経験・技能のある介護職員、他の介護職員、その他の職種の設定」の2点において法人単位での取扱いが可能となります。ただし、法人単位で月額8万円の処遇改善となる者等の設定・確保を行う場合、法人で一人ではなく、一括して申請する事業所の数に応じた設定が必要となるので注意が必要です(事業所の中に設定することが困難な事業所が含まれる場合は、実態把握に当たりその合理的理由を説明することにより、設定の人数から除くことが可能)

加えて、取得区分が(I)、(II)と異なる場合であっても、介護職員等特定処遇改善加算の取得事業所間においては、一括の申請が可能であることも予め認識しておきましょう。




早め早めのシミュレーションを

以上、第一弾のQ&Aについて雑駁ながら内容の確認及び解説をさせていただきました。

今後は更に第二弾、第三弾のQ&Aが発出されてくることと思われますが、事業者としては先ずは現時点の全情報を網羅しつつ、経営目線、職員目線(=新たな仕組みが職員から見て魅力的に映っているか?定着促進のインセンティブとして機能出来そうか?etc)」、そして地域内競合目線(=同地域内の法人はどのような手を打ってくるか?etc)」という3つの目線に気配りを行いつつ、早め早めに想定額の算出や職員の区分割りなどに対して頭を働かせておくこと(=心構えを含めた事前準備)が重要だと言えるでしょう。

私たちも今後、引き続きの情報収集を含め、新たな視点が得られ次第、皆様に向けて発信してまいります。

※上記内容の参照先URLはこちら

https://www.wam.go.jp/gyoseiShiryou-files/documents/2019/04151130459/ksvol719.pdf


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