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8月に開催された“介護給付費分科会”のポイントを理解しておきましょう
2017年08月31日

2018年度法改正・報酬改定に向けた議論の第一ラウンドが終了

2018年度介護保険法改正・報酬改定の具体的議論が現在進行形で行われている“介護給付費分科会”。

2017年4月末に本格始動した本会は5月(2回)、6月(2回)、7月(2回)、8月(2回)と開催され、各サービスごとの課題や検討すべき論点を整理する「第1ラウンド」が終了しました。9月に予定されている事業者団体へのヒアリング・質疑応答を終え、今後はいよいよサービスごとに改廃すべき基準や加算の要件などを具体的に話し合う「第2ラウンド」へ突入する予定です。

これらの情報を早めにインプットし、(心構えも含めた)然るべき準備を行っていく事を目的に、8月に開催された会で挙げられた論点について、内容を確認してまいります。

今回は、8月に議論のテーマとして挙がった特定施設入居者生活介護、介護老人保健施設、介護療養型医療施設、介護医療院、介護サービスの質の評価・自立支援に向けた事業者へのインセンティブ、介護人材確保対策、区分支給限度基準額の中から、特に多くの事業者の皆様に関連するであろう、または知っておいた方が賢明かもしれない2つのテーマ(自立支援に向けた事業者へのインセンティブ、介護人材確保対策)のポイントを抜粋してお届けします。




2017年8月開催の「介護給付費分科会」で示された論点(抜粋)とは

では、早速、中身を確認してまいりましょう。
「自立支援に向けた事業者へのインセンティブ」に対する論点としては、下記の3点が挙げられています。

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【論点】
○ 「自立」の概念について、どのように考えるか。
○ 個別サービス事業所の質の評価や個別サービスの質の評価について、ストラクチャー、プロセス、アウトカム等の観点から、どのように考えるか。
○ 自立支援に向けた事業者へのインセンティブ付与の方法について、どのように考えるか。

※2017年8月23日 介護給付費分科会資料より抜粋
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今回は上記2番目と3番目の論点を絡めながら確認してまいります。

上記の通り、介護の質の評価はそもそも「ストラクチャー(=人的配置等の“サービス提供構造”。サービス提供体制強化加算etc)」、「プロセス(=事業者と利用者との望ましい相互作用等。生活機能向上連携加算や個別機能訓練加算etc)」、そして「アウトカム(=サービスによりもたらされた利用者の状態変化等。事業所評価加算や在宅復帰・在宅療養支援機能加算etc)」という3つの軸から構成されています。

そのような中から昨今、社会保障費用の効率的運用という課題を背景に、特に3つ目の「アウトカム」がクローズアップされている訳ですが、議論の状況から現時点における推論(私見)を申し上げると、平成30年度の報酬改定においては先行している自治体の動きを参考にしつつ、各自治体単位において「要介護度の改善」「要介護の引き下げ率」「ADLの改善」等をテーマとしたインセンティブを大枠としてスタートさせるのが常識的な範囲ではないかな、と感じる次第です(勿論、9月以降に全国的な統一基準で推進できるようなロジックが出てくれば、それらのロジックを背景にいきなり何らかの“事業者インセンティブ”を全国統一基準で開始する可能性も当然出てくるかもしれませんが、現時点ではそこまでに至る事が出来るだけの情報・知見が集積されていないのでは?という見立て)。

その流れの中で政府が推進しようとしている「科学的介護」のロジック・体系を同時並行で確立し、次期改定(2021年度)から本格展開が始まるのではないでしょうか。

ちなみにインセンティブという視点における「先行している自治体」の代表例は、東京都品川区、神奈川県川崎市、岡山県岡山市(下記を参照)の3自治体。

例えば神奈川県川崎市が推進するインセンティブ施策“かわさき健幸福寿プロジェクト”においては成果指標を「要介護度」「ADL」に定め、要介護度については「平成29年7月1日時点と比べて、期間終了時点で改善すること、或いは改善に至らなかった場合であって、同一の要介護度を一定期間を超えて維持すること」、ADLについては変化を測るための能力評価項目(18項目)を設定し、「平成29年7月1日時点と比べて、期間終了時点で改善したこと」をゴールに、「報奨金(5万円程度)」「市長表彰」「市の公式ウェブサイト等への掲載」「事例検討会等における公表」等のインセンティブを付与する仕組みを展開しています。

下記表は平成27年度(一昨年)のデータですが、昨年の2016年7月~17年6月の期間においては市内の介護サービス事業所の約1割に当たる246事業所・214名(対象高齢者数)が参加し、そのうち、延べ87事業所・34人で要介護度の改善がみられたそうです。介護経営者としてはこのような動きが各自治体でも展開されるかもしれない、という可能性を含んでおいた方が良いのではないでしょうか。
※最下部の「資料1」をご覧ください

では、続いて「介護人材確保対策」について確認してまいります。論点として掲げられているのは次の通りです。

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【論点】
○ 介護人材の安定的な確保のため、総合的な取組が進められている中、介護職員処遇改善加算のあり方について、どのように考えるか。
・特に、介護職員処遇改善加算(IV)及び(V)については、要件の一部を満たさない事業者に対し、減算された単位数での加算の取得を認める区分であるが、当該区分の取得率や報酬体系の簡素化の観点を踏まえ、そのあり方についてどのように考えるか。
・また、対象費用や対象職員の範囲を含む介護職員処遇改善加算のあり方については、平成29年度介護報酬改定に関する審議報告を踏まえ、介護従事者処遇状況等調査により、月額1万円相当の処遇改善による実際の賃金改善効果を適切に把握した上で、引き続き検討していくこととしてはどうか。
○ 介護ロボットについて、その活用による評価をどのように考えるか。

※2017年8月23日 介護給付費分科会資料より抜粋
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1つ目の論点を更に簡素化すると、「2018年度法改正時点においては新たな処遇改善施策の展開はなし(=2017年度に新たな処遇改善加算を新設したばかり)」「処遇改善加算IV・Vは廃止」という内容だと思われます。

確かに、IV・Vの取得率が下記の様な状況であることを考えると、この加算を敢えて残す必要はないかもしれないな、とも感じるところです。
※最下部の「資料2」をご覧ください

2つ目の論点「介護ロボット」については数年前から重点的に開発等の支援を行う分野が定められ(移乗介助、移動支援、排泄支援、認知症の方の見守り、入浴支援)、平成25年度以降、延べ133件の開発支援、並びに約5,000の導入支援等の実績を積み重ねてきました。また、更なる効果検証を行うべく、現在、40の介護施設等の協力の下、見守り及び移乗介助の分野において実証事業が展開されているところです(実証事業は2017年8月で終了)。

厚生労働省としては更なる普及・発展を念頭に、実証事業の結果に基づいて何らかの積極施策(導入加算等?)を次年度法改正のタイミングに合わせて打ち出す意向が強いように見受けられます。

有識者の間でも「推進すべき」「時期尚早」と賛否両論に分かれる本テーマですが、現政権が推進している大きな方向性を勘案した場合、前述の「積極施策」が打ち出される可能性が高い、と見ておくのが妥当ではないでしょうか。




議論のプロセスから関心を持って情報を追いかけておくことが大切

以上、現在、議論されている内容から2点を抜粋して解説させていただきました。

上記情報はあくまで「現時点における議論のプロセス」であり、今後、時間の経過と共に、更に内容が煮詰められたり、或いは、場合によっては議論の風向きがいきなり転換するような状況も発生するかもしれません。

その意味でも、介護経営者としては「こうなりました」という最終的な結論だけでなく、中長期的な視点のもと、「何故このような内容に着地したのか?」という、言葉の裏に潜む意図や背景を温度感も含めて理解する姿勢が重要となってくるのではないでしょうか。

そのためにも早め早めに情報をキャッチアップし、頭の中で“PDCA”を回しておく事が重要だと思われます。「もし上記が実行された場合、自社にはどのような影響が出てくるか?」「それら想定される影響に対し、どのような対応を行う事が最適なのか?」幹部育成の視点も含め、そのような議論を社内で始めていかれる事を是非、おススメする次第です。

私たちも今後、有益な情報を入手出来次第、どんどん情報を発信してまいります。



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